人は生きる為に家族のもとへ帰る。
家族を捨てた男が再び家族のもとへ帰る。
生きる為に。

「いのち」の製作

 この作品はシリアスでいくのか、あるいはコメディーでいくのか……
脚本も手掛けたウマロフ・ブニョード監督は、自殺を扱ったこの作品を製作するにあたり、 テーマがテーマであるが故にアプローチの仕方に大いに悩んでいた。

 そもそも何故今自殺を扱ったテーマを選ぶのか……その根本的な疑問を監督に聞いてみると、「母国であるウズベキスタンには、ほとんど自殺者がいない。それなのに日本では年間3万人もの自殺者がいる。国民的、宗教的な違いが大きいのだろうが、自分には分からない。しかし家族を失う悲しみだけは同じである。その家族をテーマに映画が創れないだろうか」と。

監督の想いは理解出来たが、かといって重苦しいだけの映画では観客も付いてこない。そこで監督が常に言っていた、「自殺は勢いでやるのではないのか、やってから後悔している人もかなりいるのではないのか。逆に自殺行為は愚かで滑稽な事である」、という考えのもとにコメディーテイストで脚本を練り直した。

ストーリー

 ストーリーは、主人公の男が日常の悩みから逃れるため、 勢いで死を選び、樹海といういかにもという場所で自殺を試みようとする。しかし、何度も失敗して断念。やがて自分の愚かさに気付き、家族の元へ帰ろうとするが、深い樹海から出られなくなってしまう。死ぬ為にさまよっていた男が、生きる為にさまよう事になる。

キャスティング

 よくある話の展開ではあるが、敢えてこういった内容にし、 シリアスな話をいかにコミカルに持っていくかに重きを置いた。そのため役者も当初は50歳位の実年齢の方を探していたが、少しリアルに感じたので、年齢を下げ、以前からシリアスな芝居も出来、 それ以上にコミカルな芝居もこなせる印象があった劇団6番シードの小沢和之さんに目を付け、出演を依頼した。

奥さん役も、当時は劇団を引退されていたが、長年の小沢さんとのコンビネーションを期待して、附田泉さんにお願いした。リビングの喧嘩のやり取りも、舞台の芝居感覚を出してもらうため複数カメラで一気に撮り上げた。

撮影から完成へ

 撮影場所は、予算の都合で都内を中心に探していたが、樹海だけはリアルな場所で撮りたいという監督の想いから、四日間掛けて富士の樹海でロケを敢行した。
 一週間の撮影期間をかけ46分の中編映画に完成したが、監督の想いは伝わったと思う。映画の中でこれでもかという位に家族の写真を見せているが、家族愛を強調したいと考えていた監督のしっかりしたメッセージに繋がっている。ラストのエンドロールで、30年以上前のアイドル歌手のデビュー曲を使用しているのも、当時青春の日々を送った、自殺者が一番多い50歳以上の世代の方々への応援歌にしたいという、監督の想いからである。

撮影 中坊武文
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