全員「よろしくお願いします!」
――では早速。今回、演出がtheBBB(*1)に求めたことは何ですか。
松本陽一(脚本・演出) そうですね、僕は舞台セットのイメージが出来てから、台本を書き始めることが結構ありまして。出はけ口だとか建物の雰囲気がつかめてから、その中で人がこんな風に動くとか。それが一番最初の作業だったりするんですね。だから最初にプランの寿一君に「こういうセット作ろうぜ」というのがこの作品のスタートで、台本より先に始まったんです。先に建物ありきって感じでしたね。
田中寿一(舞台美術) 前回の「テンリロ☆インディアン」でも美術プランをやらせてもらったんですけど、その時はもう最初からはけ口とかも決まってて、こっちは決まった枠の中でどう遊ぶかって感じだったんですけど、今回は本当に最初からこっちに任せてくれたとこがありまして。だから、最初のプランでは階段があるだけで2階は何も無かったんですけど、アクティングできるスペースが増やせたし、階段自体も折れ曲がってそこで遊べるスペースができたし。任せてくれたことで、こっちもどんどんアイディアを膨らますことができましたね。すごく楽しい作業でした。
松本 舞台はアメリカ兵が昔飲みに来てた酒場です。今は来てないんですけど。ちょっとダンスホールにもなるような。そういう洋風なイメージがあったんですけど、プランしていくうちに、建物の外の壁を作ろうというアイデアをもらいまして、じゃあそこに花道つけちゃおうという感じで、芝居自体もセットとともに変わっていったんです。今回の劇場の芸術劇場小ホール1っていうのは、自由に舞台を変形させられるんです。せっかくなんで、四角い舞台じゃなくて、舞台に高さの変化をつけたり花道なんかも作っちゃおうかと。本来は花道は下手(舞台に向かって左側)に作るのが世間の筋なんですけど、最初に出てきたプランが上手(舞台に向かって右側)だんったんで、それも面白いかなと思って。どうなるかわかんないけど、やってみようって感じで台本を書きました。
田中 稼動床パネルって言うんですけど、それを使うにも左右対称じゃ面白くないだろうってことで、段差とアシンメトリーってのが頭にあって、みんなでアイデアをだしあいました。
浅田啓治(舞台監督) みんなで考えたな。パズルみたいだったよな。
田中 ここをこうすると狭くなるとか、お客さんの見え方とか時間をかけて話し合って。
松本 最初考えたのは面白いけど、客席が作れないとか。舞台ばっかりじゃんって。
浅田 お客さんを入れられないって制作サイドにしかられて。
松本 最終的には面白くて、お客様にも満足してて観てもらえるものになったと思います。
――では、今回のセットでtheBBBのみなさんが各自気をつけたことを教えてください。
浅田 僕のポジションはですね、舞台監督というものなんですけど、この仕事はメインにスケジュール管理という仕事があるんですよ。実際に図面や絵を描くことは、2人(寿一チロル)に任せていて、それをどう期限内に進めて、どう人を振っていくかというのを考える仕事です。ということで、大道具〆切日までもう1週間ですけど、それを目指して頑張っています。
松本 佳境ですね。対談やってる場合じゃないよね。
――すみませんすみません。
浅田 ははは、これ本音。太字でお願いします。
田中 うちら分刻みのスケジュールなんで。
――じ、じゃあ、ちゃっちゃとやっちゃいましょう。舞台美術の寿一さん。
田中 僕が気を配ったのは遊ぶってことですかね。でも好き放題遊んでいいってわけじゃなくて、例えば製作指揮のチロルのほうでこれどうやって作るんだよ、みたいな制限もかかってくるし、演出上の制限もかかってくる。時代考証もあるし。で、そんなかでどれだけ遊べるかっていうのを、いろんな資料を参考にしながら作りました。ひょっとしたらその時代にありえない造りかもしれないけど、そういうのも含めて遊べるだけ遊んでみようと。まだ色を入れてないのでこれからまだどれだけ遊べるかって部分もあるんですけど。気をつけたのはそれくらいですかね。あと、スケジュール的にはいろいろ迷惑かけました。
浅田 あははは。
田中 残りも頑張ります。
――じゃ棟梁(チロル)。
チロル(美術製作&棟梁) 気をつけたこと、、、あれですね、道具にお金をかけましたね。
――道具というと?
田中 今までは『安物買いの銭失い』って感じだったんですよ。電動ドリルが買ったその日に壊れたり。
――電動道具を揃えたってことですか?
浅田 まあ、その他もいろいろ。誰でも木を斜めにきれいに切れる道具とか。そういうのを棟梁が調べて買ってきてくれました。地下(6Cは稽古場の地下室が大道具制作場になっている)にはいま新兵器が一杯で楽しいです。
田中 チロルはデパートでうきうきする主婦みたいに、ホームセンターでうきうきお買い物していますからね。
チロル 3時間はでません。
――長いっ!
田中 笑顔で袋抱えて帰ってくるわけですよ。
浅田 でもいい予算の使い方だと思いますね。
松本 本人ほとんどしゃべってないけど。
――お願いしますよ、棟梁(チロル)。
チロル え?なに?
――いや、対談なんでトークを。
チロル あ、ええ、そんな感じですね。
浅田 俺らがしゃべったことをちろがしゃべったことにすれば?
チロル それはダメです。
――じゃ棟梁(チロル)におききします。今回の6Cメンバーの働きっぷりはいかがですか?
チロル(棟梁) いいですね。みなさん、きっちり動いてくれて。結構一日に課したノルマもやってくれて助かります。
――じゃ〆切までにばっちりですね。
チロル(棟梁) ええ、えー、え?
全員 「あははは。」
チロル(棟梁) そうですね、ええ、多分いけると思います。
田中 ですからね、初日の開場時間に来て、開場が遅れてて、奥でトントンいってんなと思ったらそん時は推し量っていただきたいと。
――まだ奥でやってるぞ、と。
田中 ドトールに行くなりなんなりしていただいて。
松本 それ、照明も吊れてないってことじゃないの。
田中 ってことは、まずないんですけどね。
――えっと、今回アクションが多々ありますが、それについては?
浅田 まあ、壊される心配ってのはあるんですけど。ちょっとかっこいい言い方しちゃうと、だからって芝居に制限つけたくないっていうか。
松本 ま、予期せぬことはありますよね。物は必ず壊れますから。それと迫力ある芝居っていうのを両立させていくのが、最終的なお芝居ですね。稽古中も役者がテンションが、がーっとあがって、触っちゃだめなとこに触っちゃったりする。その時ぼくはすぐ舞台監督の浅田の顔見ちゃうんですよ。
浅田 あははは。らしいですね。みんなオレを見るらしい。稽古の中で壊れれば、それをどんどん改良していきますし。実際テーブルが壊れてかなり頑丈なものになりました。
田中 だから搬入搬出は重くて大変です。
――では、最後に一言ずつ。
松本 今回2階建てのセットということで、劇場に入るまで役者がそれを体感できないんですよ。2階建てで更にその上があるような、すごい立体構造のセットなんです。そこに立つのをすごく楽しみにしています。いろいろ紆余曲折はあるんでしょうが、この3人のチームワークがね、いいんじゃないかなーと僕は思っています。すごい期待しています。いいセットになって、その次に〆切が守れたらいいなくらいの気持ちで、頑張ってください。
浅田 スケジュール期間内に、ほんとに建ったら、あ、「たら」は変ですけど、建てるんですけど、その出来上がった姿を見たときに、マジでちょっと泣くかもしれないです。ま、そのあと本番なんですけどね。それくらい込めているものはありますね。全体的な作品って意味でも、仕事って意味でもやりきることができたら。え、いや、やりきりますけど。
田中 前回も今回もそうなんですが、僕はぱっと見、無駄に見えるスペースを作るんです。意図してたりしてなかったりですけど。前回で言えば檻と壁の間のちょっとした隙間とか。そういうとこで、役者が遊んで欲しいなと思います。あと、隠しスペースとか。今回は冒頭シーンの小沢さんが何処から出てくるかに注目して欲しいです。それだけです。
浅田 そこなんだ、それだけなんだ。
――じゃ、棟梁(チロル)。
棟梁 いやあ、今回のセットは予定時間内には建たないですね。
――ちょっと待って!これ締めの言葉ですよ。
棟梁 いやまじでまじで。
――で、でも今からわかってるんだったら何とか。。。
棟梁 だからそうなってくると、それをはやく建てるための練習がいるわけですよ。
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左から 浅田啓治(the BBB)・田中寿一(the BBB)・松本陽一・チロル(the BBB) |
――ああ。。
棟梁 その練習も取れないわけで。
全員 「・・・」
――・・・
――カットしますよ、ここ。
棟梁 えっと、質問なんでしたっけ?
松本 今回の意気込みみたいなことだよ。
――そうです。いいこと言ってください。
棟梁 まあ、以前より新しく導入したものがありますから、よろしくお願いします。
――??? えっと、お客様にここを見て欲しいということころとかありますか。
棟梁 別にこの部分ってとこはないですね。全部です。だから芝居っていうよりセット見に来てって、
全員 「爆笑!」
――チロルさんも役者ででてるじゃないですか!
棟梁 って、僕はみんなに言ってます。
田中 ま、役者もセットもどっちも負けるなってことで。
――・・・締めてくださってありがとうございます。では、宴もたけなわですがこのへんでお開きにしたいと思います。お忙しい中ありがとうございました。
全員 「ありがとうございました!」
前回に引き続き、その製作指揮を一挙に担う『the BBB』。さらにレベルアップを続ける6C舞台美術。それもすべて彼らのおかげ、は言い過ぎですが。しかし今回のセットは色んな意味でチャレンジです。大変な部分もありますが、また完成が楽しみでもあります。インタビュー中の 『the BBB』は時間ない!眠い!やばい!etc...とは言ってはいましたが、常にその目は生き生きとしていました。必ずや彼らの努力は最高の脇役となってくれることでしょう。劇場へお越しのみなさま、舞台セットも是非ご期待ください!
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