>>>役者vs松本陽一 対談企画<<<
第4回 ブラボーカンパニー・蘭 真人

蘭さんは、どの質問にも丁寧に答えてくださって、舞台上での特異なキャラを引き出せないですね。

松本 特徴としてましてね、ざっくり言うと、ボケというジャンルの笑いを得意とされる方は、うちの小沢も同じなんですけど、とにかく真面目なんですよね。真面目に一生懸命お芝居をされるんですよ。それがおもしろい。色気を出したりするんじゃなくて、単に役としてそこに一生懸命いるのが面白い。だから、普段の蘭さんからは、舞台の上での面白さを引き出せないんです。そのギャップがいいんですよね。

なるほど。この対談だけを見たら、まさかあんなお芝居をされるなんて想像もできないですよね。
では、オイルについてもそろそろお聞きしていきたいのですが、台本を読んだ時の印象はどんな感じでしたか?

そうですねえ・・・うん・・・・「なるほど」と(笑)。わかりました!という感じでしたね。

松本 僕は、役名つけた時点で「勝った」って思いましたね。「役名・カレーってないよな」って。ある意味、軽く失礼じゃないかと。その時点で早く出したいなあと思っていて、ただ、中盤から登場というのは決まっていて。それで先に、衣装とかの話を始めたんですね。そしたら蘭さんがうれしそうに「役名から察するに、ターバンを用意したほうがいいんですか!?」って聞いてきて、「いえ、違います、普通の出前の兄ちゃんですから」って言ったら、ちょっとガッカリした感じで(笑)「ああ・・・ターバンいらないんですか・・・・」って。そのガッカリした顔がすごく印象的でしたねえ。
ああ。そうだったかもしれないですねえ。
松本

それで、いよいよカレーが台本に登場した日が、とにかくすごかったですねえ。確か、蘭さんが夕方から稽古にいらっしゃったんですよね?その前にね、能龍さんと話していたんですよ。「これ(カレー)を蘭さんがやったら凄い事になるぜ」って。過度に現場の期待が高まっていってたんです。みんなもみんなで、過度に高めすぎてしまうと、普通に読んでも、別に悪くないのに「ああ、蘭さんってこんなもんなんだ」みたいになっちゃうかもね、なんて。僕も、不安半分期待半分、初めてご一緒するし。
で、読み合わせをした開始3秒くらいで、共演者が全員噴出して、全然稽古が前に進まない(笑)。辛うじて、良く絡むセールスマン役の能龍さんだけが踏ん張って(笑)。
これが後に「カレーショック」と呼ばれた、稽古場が揺れた1日になりました。
初めてお芝居を見させていただいた時の「温度差」が、うまくいったかなあって思いましたね。

こんな質問は失礼かもしれないんですが、ああいう役はよく来るんですか?

ブラボーの公演でも、色物とかボケとか地蔵とか宇宙人とかが多いですね。

松本 僕はね、カレーは色物とは思ってないんですよね。
あ、それ、わかります。
松本 その辺でどうなのかなあと。蘭さんが今までやってきた中で、こういうトボケた感じの役は経験されてきたのかなあって。
結構ありますね。外人とかトボケたのとか。でも、自分のところでやるのと、ちょっと種類が違っているので、最初読んだときに新鮮でした。自然とそういう役割分担って自分の劇団でもあるので、こうやったらおもしろいかなと考えながらやりましたね。
松本

ちょっとバラしちゃいますとね、能龍さんが、「蘭さんは、上手く読めた次の日に必ずこう言うんだ」って教えてくれたんですよ。なんて言うかというと「(うまくやれているかどうか)僕はよく分からないんだけどね」って。その言葉が出た日は、蘭さん的に相当「してやったり」と思ってる日なんだって(笑)。
そのカレーショックがあった日、喫煙所で能龍さんが「いいですねー」って蘭さんに言ったら「そう?僕はあんまりよくわからないんだけどね」って言ってたって(笑)。

ああ・・・言ったかもしれないですねえ・・・(照)読まれてたか・・・能龍君が唯一若干共演したことがあるんですけどね。
鋭いな、彼は(笑)。
松本 そんな感じで、ちょうど今日ですね、この本の一番のメインとなる、全員に1回ずつある長台詞のカレーの部分を配ったんですよ。そしたら今日も(笑)、第二次カレーショックが(笑)。
オイルショックみたいだなあ・・・
松本 周りの共演者の人たちは、誰も遠慮せずに笑いながら舞台上にいますからね。
そうなんですか!?
松本

そうですよ。後ろはだーれも芝居してないですよ(笑)。
蘭さんが一人で一生懸命やってる時に、後ろはみんな「ガッハッハ」って。

知らなかった・・・

元々このカレーのキャラクターを思いついたのはいつですか。

松本

これね、早いんですよ。
この作品のイメージが出来ていって、まだストーリーとか全然できてない頃に、ちょうど物語の真ん中辺りで、何人かの人物が集まったところに、出前持ちがライスカレーを持ってきて「お待たせ」って言う画が浮かんだんですよ。

それはすでに蘭さんのイメージで?

松本

そうですね。蘭さんと飲んだ次の日くらいに思ったかもしれないですね。
それは確定的で、カレーを持ってくるっていうのが先にあったんです。

キャラクター的には迷わずに、今の形になったんですか。

松本

イメージが早かったので、その後もどんどん膨らんでいくんですよね。でも実際に、じゃあ書こうってなったら、怖かったり、良いイメージ通りにならなかったりするんですよ。その怖さはあったんですけど、まあまあボチボチうまく書けたかなあとは思いましたね。
そして蘭さんにお渡ししたら、もう、何十倍もの形になって帰ってきた(笑)。

書いたときの予想以上のものが出てきたんですね。

松本

もう、はるかに(笑)。


演じていてどうですか。

僕はただ、楽しみたいなあという感じで。割と気楽にやらせていただいているかなという感じですね。
みんな落ち着いた人たちなので、結構真面目にやってくれたら、僕おいしいなあって(笑)。

松本

結構ズルいですよね(笑)。


ズルいですねえ。

松本

また能龍さんの話なんですけどね、ボヤいてましたよ。佐久間さんとか能龍さんて、凄く緻密に考えて、いろいろ練ってお芝居されるんですよね。そうやって積み上げた芝居を、蘭さんみたいな人に一気に持って行かれるって。しかも、今回はそこに小沢もいるもんでね。最年長の二人に挟まれる能龍さん(笑)。

小沢さんは僕と同い年なんですけど、僕らが一番大人気ないんですよ(笑)。

松本

ほんとそうですよ。台本的にも、一番年下の鈴木智晴君が一番大人。
上に行くほど、大人気なくなっていくという(笑)。


最後の登場ですよね。待っている間はどんなことを考えているんですか。

本番も含めて(笑)、どうしようかなあと。
(遅出は)前にもあったんですよ、その時も、様子を伺いながら、今日はどうしようかなあと考えていたりして、それが逆にスリリングで、(客席が)冷えていたら冷えていたで、盛り上がっていたら盛り上がっていたで、まあ、どっちにしてもおいしいかなあ、と(笑)。

松本

やっぱりズルいですね(笑)。


ズルいです(笑)。
結構、緻密にプランしたりはするんですか。

いやあ、緻密には無理ですねえ。本能ですね。


松本さん的には、これ以上カレーに対して求めている事はない、という感じですか。

松本

最終的には、能龍さんに任せます(笑)。結構ね、カレーの出るシーンって、みんなでワーっていうのが多いんですよ。もちろん、しっとりしたところとかだといろいろ演出もしますが、カレーの場合は、みんなでワイワイやってる部分なんで、その場の空気感と言うか、役者さんにある程度お任せしているところはありますね。最低限のことはお願いするけれど、本番はその空気感を出してくれればいいかな、と。


では、最後にメッセージをお願いします。

僕のことを初めて見るという方もいらっしゃると思います。結構真面目に・・・あ、真面目にって言っちゃうとだめなのかなあ・・しまった・・・(モゴモゴ言っている)・・・あ、あの、僕も楽しんでやらせていただきますので、是非楽しんで帰っていただけたらと思います。よろしくお願いします。



舞台立っている時の蘭さんと、普段の蘭さんおギャップに驚いてしまうほど、丁寧で礼儀正しく、とても真面目な方だということがひしひしと伝わってきました。一つ一つの質問にゆっくりと、けれども子供のように目を輝かしながら答えてくださった、最年長・蘭さん。
舞台上の蘭さんを見逃したら、後悔しますよ!

さて、次回は、
天然工房・松田信行さんにスポットを当てます。
どうぞお楽しみに!