じゃあ、ちょっと話を戻しまして、松本さんが佐久間さんのお芝居を初めて見たときの印象などは覚えていらっしゃいますか。
松本 |
実は、今回参加される役者さんの中で一番拝見させていただいてるんですよ。6回ぐらいは見てると思うんです。前に所属されていた劇団の公演とか、妹尾君が出た公演とか。その後も機会があってちょこちょこ見ていて。もちろん、佐久間さんがプロデュースされた「熱海殺人事件」も拝見しましたし。そこですね、ターニングポイントは。佐久間さんを意識するようになったんですよね。
その芝居の中で、ぬるーい素笑いみたいな芝居をしてたんですよね。それまで結構、声を張ってる芝居が多くて、そこで「あ、こんな一面があるんだ」って。「熱海〜」でも張ってる部分は多かったんですけど、その両方の面が見れたんですよね。それで、佐久間さんの魅力を知ったというか。あの頃から、いつかは、と思ってたんですけど。
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佐久間 |
ありがとうございます。
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松本 |
以前にも一度オファーさせていただいたんですけど、スケジュールとかでいろいろ合わなくて、それで今回いざオイルをやるとなったときに、1年前にこの企画が立ち上がったんですけど、能龍さんをすぐに捕まえて、その後すぐに佐久間さんにお話させていただいたんですよ。自分の劇団の予定が結構先まで埋まってらっしゃるんじゃないかと思って早めに声をかけたんですけど、もうちょっとしたら決まります、ということだったんで、じゃあもうちょっと待ってみよう、と。それで被らなければ出演していただけるだろう、と思っていて。それから、それが繰り返し繰り返し(笑)、紆余曲折あってですね、最終的に一番最後に佐久間さんの出演が決まったんです。
夜の電話でね、佐久間さんが決まったとき、ホントに嬉しかったですよ(笑)。
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佐久間さんとしては、合流して2週間しかないということに対して、不安などはなかったですか。
佐久間 |
松本さんの作品とか見せていただいて、すごく面白い本を書かれるなあ、出させていただきたいなあという思いがあって、2年位前に誘っていただいた時に、スケジュールが合わなくてお断りさせていただいたという経緯があって、今回誘っていただいたときには「じゃあ、是非」という思いもあったんですけど、自分達のところもなかなか決まらなくてどうなる事かと思ってまして。結局、合流後2週間しかないとなったときに、出たい気持ちと、それだけの稽古期間では周りに迷惑をかけてしまうんではないかという気持ちがあって、もしダメであれば是非切ってくださいと思っていたんですが(笑)、ここまできたし、やりたい気持ちがあるならやりましょうよ、という温かい言葉をいただきまして(笑)。「じゃあ、もう、絶対結果出しますんで!!」って(笑)。
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松本 |
その時にね、「佐久間さん台詞覚えるの早いですか?」って聞いたんですよ。オファーの時になんて質問するんだ(笑)という感じで。 |
佐久間 |
僕も「自信あります!」って(笑)。
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松本 |
出番少なめで、とか台詞減らして、っていう話もしてたんですよ。このオイルは、全キャラクターが輝く作品を作りたかったんですけど、なんとなく、やりようで上手く行くかなと思ってそういう質問したら「自信あります!!」って言うので(笑)、じゃあ遠慮なく書きます!お待ちしてます!って(笑)。 |
佐久間 |
役者として謙虚に断らなきゃいけないという気持ちと出たい気持ちとあって、じゃあ出ましょう、となったときに台詞減らす話になって「いやあ、自信あります!」「出れる以上は一生懸命やるので、出番ください!」って(笑)、そういうやらしい部分もあって、申し訳ないなあと思いながら(笑)。 |
松本 |
チラシも、出演がまだ決まらないまでも、とりあえず写真だけ撮っていただこうと。あの黒塗りの写真ですね。
それで、メールを送ったんですよ。普通のメールの下に一行空けて「ところで、ムリは承知でお願いなんですが、撮影来てもらえますか」って。一行空いたもんだから、普通に開いただけじゃ見えなかったみたいで。
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佐久間 |
そうそうそうなんです。 |
松本 |
いくら待っても返事が来ないんです。全然来ないから、「一行空けて書いてたんですけど、ご覧になりましたか」というメールを後で送ったら「見てませんでした」(笑)。「いや、実は明日なんですけど」って。結局前の日に決まったんですよ(笑)。 |
すごいですね、全体的にバタバタとした感じで(笑)。
松本 |
ようやく今、落ち着いてゆっくりお話ができたり稽古ができたりしてますね。
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佐久間 |
本番を終えたら、ようやく笑えるかな(笑)と。
この2週間で遅れを取り戻して、いいものにできた、っていうことになれば、笑い話になるのかなと思います(笑)。
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では、キャラクターについてお伺いしたいのですが、まずこのキャラを書くに当たって、松本さんの方でイメージした事はありますか。
松本 |
さっきも言いましたが、何度も佐久間さんのお芝居を観ているので、イメージは誰よりも強いんですよ。チラシと実際にやっている役が変わってしまったんですが、最初はイタリアンレストランのシェフという設定で。でもどうもしっくりこなくて。まだ変えれるぞ、と思ってずっといろいろ考えていて、最終的に気付いたのは、僕が見たことがない佐久間さんが見たいな、と言うことだったんです。もちろん、僕が見ている以外で近いものをやってるかもしれないですけど、新しい佐久間さんが見たいな。と。演じられる方が刺激的な本を書きたいと思っていたし、それこそがオイルらしさだと思うし、それで思いついたのが、老人だったんですね。頑固爺じゃないですけど。最初はもっと、怖い老人だったんですよ。でも書いていくうちに、だんだん柔らかくなって、いい感じになっていったんですけど、最終的にいい着地点に着いたな、と僕は思ってるんです。
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演じていてどうですか。
ちなみにこういう役は以前にも演じたことはありますか。
佐久間 |
一度、年齢高めの役はやったことあるんですけど、それがちょっと特殊なキャラクターで、作品を超えていろんなところに登場するようになってしまって、キャラが一人立ちしてしまったところがありまして。結構引き出し少ないもんで(笑)年齢上げて、って言われたときに、どうしてもそっちに引っ張られてしまう自分がいてですね、まずはそこから外さないといけないなっていう勝手な役者のエゴな悩みにとらわれたり、いろんなキャラクターが現れる中で、自分をどの辺に置けばストーリーが進むのか、あるいは掻き回せるのか、っていうさじ加減が難しくなりそうな気がしてます。尖がった役とか、物語を止める役とかまわしていく役とかいろいろあると思うんですけど、その中で、どのくらいの微妙さで世界に溶け込んで、覚えていられる役としていられるか、っていうのはすごく難しいですね。
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松本 |
佐久間さんは、台本の読み方がすごく広いですね。
対極で言うと、悪い意味じゃなくて、鈴木智晴君なんかは一つの台詞をどんな風に言うかって言う事を考えるタイプで、佐久間さんはページどころじゃなくて、台本単位で読むような感覚が一番優れてらっしゃるんじゃないかと思いますね。だから、一つの台詞がどう機能するかとか、ひいてはそのキャラクターが作品の中でどういう位置づけなのかとか、だからこそやれること、やってあげることとかあって、その中で自分がどう目立つかっていうのもあって。そういうのが凄く良くわかっていらっしゃって、ある種、自分の台詞をいいながら、パスになっている。少なくとも、自分の前と後ろの台詞に対してはパスを出してますね。
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本番まで2週間ですが、今一番悩んでる事などはありますか。
佐久間 |
自分がこの作品の1/8と言うか、それぞれ大きさや割合は違うと思うんですけど、8ピースを揃えてきれいな丸にするために、自分がどういう形でいればいいのかな、っていう部分はずっと悩んでますね。
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演出家から見て、こうなって欲しいという部分は見えてますか。
松本 |
この間合流して読んでいただいたときに、ゴールというと変ですが、完成形が見えたので、ちょっとほっとしましたね。これで2週間でいけるな、と。ある種、ビジュアルや声も含めて佐久間さんの濃い部分を生かしつつ、老人の枯れた感じが時間と共にどこまで熟されるというか、醸されるかなっていう楽しみはありますね。「ここまで行ってほしい」っていうわけではなくて、浅漬けくらいでいいのかしれないし、それは僕にもわからないんですけど。
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今回オイルの目玉である、全員にある長台詞ですが、他のキャストさんと趣が違いますよね。
あれは佐久間さんに当てて書いたんですか。
松本 |
そうですね。実は苦労しまして、佐久間さんが合流されない間に書かなきゃいけなかったんで、稽古を見ながらイメージを膨らます部分もあるんですが、そのイメージが薄いので、戸惑った時期もあって。いよいよその佐久間さんの長台詞を書くところに差し掛かって、6人目だし、ネタも尽きてきてて(笑)、なんかもっと佐久間さん苦労しないかな〜と思ってて(笑)。それで能龍さんに「佐久間さんが苦しむ長台詞、なんですかね〜」って聞いたら、「目的間違ってませんか(笑)」って言われて。その時に、「あ!!これだ!!」って閃いたんですよ。すごくね、佐久間さんのイメージが沸いたんですよ。それを読んだ能龍さんも、「これなら佐久ちゃんいけるね。佐久ちゃんがこうなるイメージが沸きますよ」って言ってくださって。
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最初にその部分の台本を見たときの感想は?
佐久間 |
この作品の中に、一人一人の長台詞のシーンがあるということで、6番目っていうのは分かっていて、もう、それだけで高いハードルだなと(笑)、もうお客さん的にはね、何人も見てるわけだし、きっつい順番だなあ〜と思ってて。それで、今までの方とは違う手法だったというのは有難いことだったし、当てられたハードルっていうのは役者冥利に尽きるかな、と。でも当然、特殊な形だからってそこだけ浮いちゃいけないし、そのバランスには悩んでますね。
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松本 |
まだ全然稽古してないですよね。 |
佐久間 |
もっともっと腕をあげて、自然にアレが受け入れられればいいなあと思いますね。 |
あと10日、オイル漬けの日々ですね。
では、最後にですね、お客様にメッセージをお願いします。
佐久間 |
当日のパンフレットのコメントにも書いたんですが、こうしてオイルのメンバーと会えているのも偶然とか不思議な面白みで、それを同じようにお客さんと役者というのも出会いだと思うんですね。それが舞台のおもしろさというか、一期一会だからこそ、舞台が生モノだと言われたり、その空間の共有がおもしろかったりするので、今回もこの舞台で、お客様と素敵な出会いができたらな、と思っておりますので、是非お楽しみに、よろしくお願いいたします。
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個性豊かな8人のオイルメンバー達。
演劇論から人生波乱万丈伝まで、たくさんのエピソードをありがとうございました!
様々な場所で様々な経験を積んで来られた30代の皆さんが、舞台上で繰り広げる化学反応を、是非皆様の目で確かめてください!!
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