この劇場は設備が非常に整っていた。 まず、モニターがそこかしこにある。おかげでどこにいても今現在舞台上で行われている事をテレビ画面を通してリアルタイムに確認できる。 そして、各場所との内線電話も完備されていた。 しかし、ただ一つ難点だったのは楽屋が地上2階、舞台は地下2階。つまり、4階分の階段が私たちを待ち受けていたのだ。これは想像以上にキツイ。 芝居自体も息が切れるようなアクションが続くものであった上に、更に4階分の階段を昇ったり降りたり昇ったり降りたり昇ったり降りたり…… ある時、楽屋にいたメンバーが「全員舞台に集合!」との声に大慌てで4階分の階段を駆け降りていくと「時間のある人は楽屋でメイクと着替えを済ませてください」と言われ、再び4階分の階段を上がっていったそうな…せっかくのモニターや内線電話はどこへやら…慣れないものはなかなか使いこなせない私たちなのだ… |
この芝居、小道具に“大福”があった。 登場人物の一人が大福をこよなく愛する設定になった。そう。“なった”のだ。確か、最初はそんな設定はなかった。台本にチラッと大福好きを匂わせるセリフがあった程度だったはず。しかし、その役を配役されたあづさが「このシーンで大福食べてて良いですか」と言い出したことから、ココで食べるなら、このシーンでも食べなきゃおかしい。そうなるとココも…ココも…ということで、2時間の作品の中で7〜8個食べる羽目になった。 その大福にも“食べやすい、食べにくい”“セリフの間に食べきれる大きさ”“同じ味を食べつづけると飽きる”などなどあるらしく、本番使用の大福が決まるまでになかなかの時間を要した。6Cには小さな事でも決して妥協しないメンバーも多い。 そして彼女は稽古、本番を通して、100個以上の大福を食べることになった。 そして彼女の『公演で必ず痩せる』説は脆くも崩れた。100個の大福の代償は彼女の腹に聞いてみるといいかもしれない。 |
この作品のセットは通称“ジャングルジム”と呼ばれるほど入り組み高低差のあるものだった。 2階部分にあたる場所の高さは、地上180cm。そう聞くと、「大した事ないじゃん」と思うかもしれないが、目線はそこから自分の身長がプラスされるため、3mを超えるのである。これは結構怖い。 高所恐怖症の役者は普通に階段を降りることはおろか、真っ直ぐ立つことすらままならない為、彼女専用の手すりが取り付けられた。 そんなある日、ある役者がふと思った。「最近、階段までの距離が遠い」と。大道具の担当者にその事を伝えると彼は一言「あぁ。緩んでるみたいだね」と… そのセットは2階建て部分と階段部分をボルトで繋げていたのだが、この作品はアクションが多く、その階段も駆け上がったり駆け下りたりと酷使されていたため、知らず知らずのうちにボルトが緩みずれていったようだ。 そう言えば、過去の作品でも「最近どうも階段までが遠いよね」という役者の疑問からセットを確認したところ、初めに設置した位置より相当ずれていた事があった。この時は1mくらいの高さの台と階段を並べて置いただけであったので、仕方ないと言えば仕方ないのだが。 …動かないはずのセットは動かないで下さい。心臓に悪いですから。 |