『君の名は』

昭和27年4月10日にNHKラジオで放送が始まり、29年4月10日まで続きました。NHKでは連続放送劇と呼び毎週木曜日の午後8時半から9時まで2年間放送されましたが、その夜は銭湯の女湯は空っぽになるという伝説が生まれるほどこの番組は大当たりしました(出演者 古川緑波・阿里道子・夏川静枝 他)。毎回、ドラマの冒頭に来宮良子のナレーション「忘却とは忘れ去ることなり。忘れ得ずして忘却を誓(ちこ)う心の悲しさよ」が入り、このテーマ曲が流れました。「思い出の橋」は、春樹と真知子が空襲のさなか、初めて出会い、再会を約束した数寄屋橋。映画化もされ(第一部〜第三部 1953〜1954年 監督:大庭秀雄)、また、ヒロインに扮した岸恵子が首に巻いていた「真知子巻き」は有名で、当時、巷にファッションとして流行しました。

【さらにギブリア】
当時、「木曜日の夜 8時半から9時までは、女湯がガラガラ」、と言われるほどの人気でした。
ところが、こんな事実はどこにもなく実は松竹の宣伝マンが番組をヒットさせるために考えた作り話。
松竹では映画作りを目前にして、ここらで何としても一発大ヒットを飛ばしたいと考えていたところ、足袋の産地の女工さんが、朝早くから夜遅くまでミシンを踏む音をうるさいくらいに周囲を響かせているのに、「君の名は」の時間帯になると、ブツリと ミシンの音を途絶えさせるという情報が舞い込んできました。宣伝部では「これだ」という具合に話しがまとまり、ミシンの音をヒントにして「女湯がガラガラ」とすりかえて大衆向けにPR。作り話のエピソードが先行し、かくしてあの伝説が生まれたのです。