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富沢謙二 (椎名肇役)
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『純粋』『馬鹿正直』『お人好し』どれをとってもバカにされるような今の世の中で、惜しげもなくそれらを出し続けて生きている男、『椎名肇』
彼と初めてであったのは2年前。ここだけの話なんですけど、台本を読んだときにやりたくない役No.1でした。理由はわかりません。でもとにかくやりたくなかった。結局そんな気持ちのままお別れとなってしまった2年前。もう2度と合うことは無いだろうと思っていました。だけどそんな僕の気持ちとは裏腹に今回またしても彼と向き合う事になってしまったのです。
お互いにそっぽを向き続けた2年前。そんなことをしてたらいい物ができないのは当たり前です。そんなわけで、嫌な気持ちを抑えて今回はじっくり彼と話し合うことにしました。そしたらなんて事はありせん。そっぽを向いていたのは僕だけで彼の方は驚くほどすんなり僕を受け入れてたのです。それは2年前も同じ事。
なぜ『肇』が嫌なのか。
それはいつのまにか僕が彼みたいな人間を馬鹿にする側になっていたからなんです。それと同時に羨ましかったのかもしれません。おかしかったら笑い、悲しかったら泣いて、頭にきたら怒る。そんな自然な感情を自然に出せる肇という男。今、僕は彼が大好きです。
みなさんが忘れてかけている大切な気持ちを『肇』を見て思い出していただけたら、これほどうれしいことはありません。肇のストレートな感情、一瞬たりとも見逃さないで下さい。 |
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松本陽一 (宍倉権造役)
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私は夏が嫌いだ。それから、舞台の上で汗びっしょりで芝居をしている役者も嫌いだ。「命かけて芝居やってます」って感じに見えるからだ。「もう少しリラックスしなよ」と声をかけたくなる。ただ、舞台上はライトが高熱を発していてとても暑く、そして結構な肉体労働であるから、汗をびっしょりかくのは命をかけているかどうかの問題ではなく、体質の問題だと思われる。
そして私は、汗かき体質だ。
宍倉という男は、ある一面ではクールな男である。キザな自分に酔っているナルシストだ。そんな男を汗びっしょりで演じるのは少々失礼だと思われる。そして宍倉という男は、それ以外にも色々な顔がある。ストーリーの中で、宍倉自身が芝居じみたセリフを言う事も多い。であるからして、宍倉という男が本当は一体どんな奴なのか分からなくなってきた。よく、その役のバックボーンをとことんまで考え抜け、とか言われるが、この宍倉という男に対してはあんまりそういう事が必要ない気がする。本当はこの男の日常の部分もあるとは思うけど、私は役者としてそんな生活臭のしない、カッコいい男を演じようと思う。
いつもはその役にどんどん自分がなり切っていくようになるのだが、宍倉という男の場合、何故かその感覚が無い。信じてもらえないかも知れないが、宍倉の眼鏡と衣裳を着けて鏡の前に立っていると、鏡の向こうの姿、形は私なのだが確かに私ではない、宍倉という男が私に話しかけてくるのだ。
「そんなに一生懸命演るなよ、カッコ悪い」
だから私はこういい返すのだ。
「オレは芝居に命かけないから、汗をかかない体質にしてくれ」と。
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丸山順一 (向山良兼役)
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探偵って言葉を小説やテレビなんかで良く耳にしますけど、実はどんな事をしている職業なのか?ってあまり深く考えなかった様な気がします。自分の考える探偵像っていうのは、松田優作みたいにスマートで渋くて凄く格好良くて、次々に無理難題な事件を解決してしまう人物。でもテレビのドキュメント番組とかを見てると、むしろ普通のオジサンって感じの人ばかりなんですよね。
今回、「MUKAIYAMA ザ・トラブルマスターズ」で探偵事務所の所長、向山良兼を演るんですけど、この良兼っていうのがまた一癖も二癖もある個性の強いオジサンなんです。
ある時は純真な青年を騙し、またある時は崩壊寸前の家庭をとんでもない計画に巻き込む。まあ自分の場合は、今までに地の丸山で演じられる役って無かったから、今回もそれなりに悩んで、また楽しく稽古をしてるんですけど・・・良兼って普段はお茶目なお気楽中年だと思うんですよ。でも仕事になると、出会った人間をその存在感と決断力で忘れさせない程の大きな人間になると思うんですよね。まあある意味、そんなキャラである良兼が、この芝居の鍵を握っている一人にもなるんですけど。
稽古を始めた頃は良兼のキャラをなかなか掴めなくて、どうしたら近づけるのかってずっと考えてました。そして悩んで自分なりに見つけだした答えは、丹波哲郎に財津一郎を加え、喪黒福蔵をチョイスした感じのオヤジ!きっとみなさんには「ど、どんな人?」って思われそうだけど、最後には感動の涙なしには観られない、素晴らしい作品を提供致します!!
本公演は7/27から7/30まで。それでは築地ブディストホールにて、「君、君だよ!そう、君を待っているんだよ!」 |
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