>>>役者vs松本陽一 対談企画<<<
第5回 天然工房・松田 信行

元々、お芝居を始めたのはおいくつのときですか?

松田

大学のときですね。それまではずっとダンスをやってました。
・・・ヒップホップを。

えええええ!?????

松田

まあ、劇団の人はみんな知ってるんですけど、「ダンス甲子園」に出て、あの頃ダンスブームで、ダンスやってりゃ女の子にモテるんで(笑)、それでいい思いをいっぱいしまして。それから一浪して大学に入ったときも、ダンス部ないかなあ、って探したんですけど無くて。僕は、芝居に全く興味なかったんですけど、ダンスやってるから使ってもらえるかな〜という軽い気持ちで入ったんです。

松本

今のヌルい感じからは想像もつかないスキルがいっぱい出てきますね〜。
ダンス甲子園でヒップホップやって、女をブイブイ言わせて・・・(笑)。

松田

生涯で、あれ以上モテることはないでしょう。

あら、じゃあ今は全然モテない??

松田

今は全然ですっ(笑)。もう、天然工房での僕を見てくれれば分かると思います(笑)。

松本 明るくさわやかでハツラツとしたダンサーっていう役をやらせたいですね〜。

では、その素敵な肉体美はその頃から?

松田

名残ですね。というか、僕、小心者なんで、体的にストイックにしておかないと、役者的にストイックになれない気がして。やっぱり役者も24時間役者として生きていたいじゃないですか。そんなストイックってつい忘れちゃったりするんですよね。だから、出来るだけ走ったりとかして、忘れないようにしてます。

松本 はあ〜、素晴らしいですね。

ダンスから芝居を始めて、芝居って面白いな、続けてみようかな、と思ったきっかけはあったんですか。

松田

本当はダンスしかやらないよと言ったのに、いきなり入った年の春の公演で、主役をやらされまして

松本 主役ですか(笑)!?
松田 いやでいやでしょうがなかったんですけど、やれと言われるし、次にダンスをやらせてくれると言うんでやったら、あ、これ結構いいんじゃないの?みたいな。目立ちたがり屋なんですよ。
松本 目立ちたがり屋っていうのは、稽古場でも出てますよね(笑)。
松田 その時は若いから、出していこう目だって行こうっていうのに凄く快感を覚えて、それからお芝居の方にだんだん傾いていきましたね。

実は天然工房さんと6番シードは、不思議な関係なんですよね。

松本

そうなんです。ある時期、こっちが勝手にライバル視してまして。
一郎ラーメンに小沢とかが出演させていただいたぐらいに、当時、うちの美術さんが天然公房さんの芝居を見に行ったらしくて。その美術さんがね、(長野の)上田市で美術展をするっていうんで、僕らそれを見に行ったんですよ、上田に、それで「いいね〜、こういうところで芝居ができたらいいね〜」なんて言ってたんですけど、そしたらその後、天然公房さんがちょうど上田市で公演を始めたんですよね。
あと、フジテレビの深夜のとある番組がありまして、うちの営業さんがですね、その番組の担当さんと少しお話する機会がありまして、僕の台本を送ったんですよ。イケるかな〜と思ってたんですけど、いろいろ制約があってその台本はダメだってことになりましてね、ああ残念だあ、と思ってたところで、天然工房さんの「ロンリーマイルーム」が採用されて。
また天然工房だ!まただよ!!って(笑)。面白い関係ですよね。

縁があるんでしょうね。

松田

僕も森角から6番シードさんを見に行ったという話を聞いて。森角が「役者がすげえ」と言ってまして。
その時に、森角は宇田川さんに惚れこんだみたいでね。多分、その作品では宇田川さんが舞台上を走り回ってたんでしょうね、それを観て森角が「女ノブりん(松田さん)がいた」って。
あんな女優いないよって。それで一緒にやりたいねという話はしてたんです。

松本 宇田川は一度オファーをいただいたみたいですね。スケジュールの都合で結局お断りしたんですが。

なるほど。潜在的にはいろいろと繋がりがありつつ、ようやくこのオイルで共演が実現ですね。
では、満を持して松田さんが6番シードに登場と言う事で、オイルのお話も伺いたいと思います。
まずは、稽古に合流して、現在の様子などいかがでしょうか。


松田

僕は基本的に、役はイメージで考えるので、詳しい役作りとかはあまりしないんです。逆にしない方が僕はいいのかな、と思って。詳しくやっていくと、どうしてもそれを説明したくなっちゃうんですね、だからできるだけイメージを大事にしてるんです。このバーテンに関してのイメージは今やってる感じで、自分としては柔軟にやってるつもりなんですけど・・・・

松本

柔軟っていうのは凄く感じますね。イメージが柔軟と言うか、とっても自由な感じなんですよね。だから逆に、嘘がない。多少こ、うしてほしいとか、共演者によって変える部分とか、まだ台詞が馴染まない時とかもね。この間ちょっと稽古でね、松田さんのリアクションが少し小さいところがあって、もうちょっと大きめにやってくださいってお願いしたら、いわゆるベタベタな感じのリアクションをしてたんですよ。普通に見ればかなり大きすぎるようなリアクションだったんですけど、松田さんがやるととっても自然なんですよね。そういう風に、中身がシフトチェンジする人なのかなあ、と思いました。何をやっても無理がないというか。

松田 昔ね、役作り勉強してみようと思ってニューヨークのメソッドを読んだんですけど、こりゃムリだよ!!って思ったんですよ(笑)。これは今のオレにはできないな、と。できないから、いろんな人を見て、町の中とかでも映画でもドラマでも、いろんな人を見て、いろんな人のイメージをなるべくたくさんストックするようにしてます。映画とかドラマの見せ方でも、例えば、俯瞰から撮るのと下から撮るので違うじゃないですか。俯瞰から見ると、これから怖いことが起こりそうなイメージがあるし、逆に下からだと物凄く強く見えたり。だから舞台でも、強い役をやる時には、強い人を演じようとしなくても、ただちょっと上から周りの人を見下ろすだけで強く見えるなあ、とか。まあ、これも、天然工房を立ち上げた時に教えなくちゃいけないからいろいろ考えたことなんですけど・・・。
松本 カメラワークからっていうのはおもしろいですね。
松田 もちろん演出家さんの目があるのと同時に、役者としてそういう事を知っておいた方が得だなあ、って思ったんですよね。上手くなるかどうかじゃなくて、「得だ」って。そうしたら、演出家から曖昧なダメをもらったときも、自分で具体的に絵にしやすくなるというか。

なるほど。一度是非松田さんの講義を受けてみたいですね〜。
では、次は松本さんに質問です。松田さんが合流されるまでの間、6Cの若手が何人か松田さんの代役をやっていましたが、実際に松田さんが立つようになって、大きく変わった部分はありますか。

松本

合流された日の最初の立ち稽古で、なんてことはないと思うんですけど、客席に背を向けて、舞台の後ろに向かって歩きながらしゃべってらっしゃったんです。それがね、凄く普通に絵になったんですよね。それまでは、松田さんが来るまで、とりあえず立ち位置を代役である程度作っておこうと思って、役者をいろいろ動かしたんですよ。でもなかなか絵にならなくて。上手行って下手行って、って結構時間かけてやったんですね。実は松田さんの出るシーンって、松田さんが来る前にかなり稽古したんです(笑)。
それで松田さんがいらっしゃって、後ろ向いて歩きながらしゃべってらっしゃる時に絵になってて。つまり、簡単に言えば、代役の時は右か左かっていう片面しか動きがなかったんですね。でも松田さんが来て、左右と前後で、両面になったんですよ。そしたら、動きが半分で良くなって。半分以下かも。だから圧倒的に絵が動かなくなったんです。でもそれで全然問題なかったんですね。その片面・両面の理屈を最初に凄いなあと感じましたね。
でも何より、周りの役者のテンションが変わりましたね(笑)。

松田

僕もね、「忍者」っていうあだ名をつけていただきましてね。僕はね、台詞を言わないときの方が楽しいんですよ。オレ、演じてるなって思うんです。それって、台詞を聞くということがアクションで、台詞をしゃべるっていうのはある意味リアクションだと思ってるんですよ。

松本 逆の発想ですね。
松田 自分がしゃべってる時って、逆に芝居できないんですよ。ある一言を聞いたときの、その人の内面とか、「この一言を言われたらこの人なんて思うんだろう」っていう方を追求したいと言うか。この台本の中でも「えっ」とか「あっ」っていう台詞が多いって松本さんが良くおっしゃってますけど、それはリアクションですよね、相手の台詞を聞いて、自分がどう感じてるかを出すという部分で。僕も、そういう台詞が多いんですけど、それ以外の部分でもどう反応していくかっていうのは、よく考えてます。
松本 稽古が始まる前だと思うんですけどね、松田さんにバーテンの役をやってもらおうって思ったときに、部屋の端っこでみんなを見てるような、で、ここぞっていう時にしゃべりだすような、そんなイメージがあって、最初はもっとしゃべらないイメージだったかもしれないですね。書き始めたら、ちょっと多くなりましたけど
松田 脚本最初にもらった時に、僕もそういうイメージがありましたね。

じゃあ、書き手も読み手も、イメージは共有されている感じなんですね。

松田

そうですね。
そうであると願いたいですね(笑)。

松本

バーテンの長台詞を始めて読んでもらったときに「これはハマった!」って思いましたね。自分的にガッツポーズでした。役者さんを上手く使えるぞって。


バーテンを演じていてどうですか。

松田

いやあ、面白いですよ!
全員で役をシャッフルするなら何がやりたいって聞かれたら、僕、「バーテンやりたい!」って答えますね(笑)。ホントに。
もっともっと台詞削ってもらってもいいぐらいです。動かないで、ほくそえんでますから(笑)。


勝手なイメージですが、6Cに松田ファンが生まれそうなアンニュイな雰囲気がありますよね。

松本

それがオイルのメンバーに入ると、グッと異質感が増して、いいですよね。おもしろい化学反応ですね、オイルならではの。

松田 周りの力で変わりますよね。こういうキャラクターが若い人の中にいたら「アイツは何なんだ!ちゃんとやれ!」ってなりますよ(笑)。周りがあるからこそ、僕はこのキャラクターをやれるんだ、ってホントに感じますねえ。

オイルで最終的に松田さんが目指している部分はどこですか。

松田

凄く限られたお客さんに対してになりますけどね、もし天然工房を見たことのあるお客さんが来たとしたら、オレのことをオレだと分からないようにしたいですね。だからね、本当に嬉しいんですよ、この役をいただけて。「やっとオレは二枚目っぽい役ができるぞ!」って。
なんといっても、ダンス甲子園ダンス始めたのも、女の子にモテたい一心でしたからね(笑)。

松本 この役は女の子にモテますよ。
松田

そこをね、少し大人になったから、ガッツくんじゃなくて(笑)、ゆったりとね、構えて(笑)。
初めて見た方にも「あの人セクシーね」って思われたら嬉しいですね。


逆に松本さん的に松田さんに求めるものは何ですか。

松本

長台詞の話なんですけどね、台詞入れてくれたら大体Okですね(笑)。演出なしかよ!って感じですけど。僕ね、イメージとかいろいろね、ピッタリ合ってる気がするんですよね。まあまあ合ってるって事は多いですけど、そこまでピッタリ合うという事はそんなにないので。

松田 嬉しいですね〜。
松本

そのまんま演じていただいたら、モテるんじゃないかなと思います(笑)。
ぬる〜い情けない男がちょっといい事を言うという感じで。


では最後にメッセージをお願いします。

松田

もちろん、高いお金を払っていいところに行けばあると思うんですけど、小劇場で、これだけの役者さんが一同に会するっていうのは僕は見たことがないし、あんまりないと思うので、そういう意味でも、今回の作品は貴重な公演になるんではないかなと思いますので、是非足を運んでいただけたら、と思います。



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