食う事と逃げる事、盗人タジムの頭の中はいつもそれだけで一杯だった。 ある日、寺院で酒を盗んだタジムは、まともな調べを受ける事も無く、 刑場に引き出され、処刑される事になる。 幼い頃、親に仕込まれて盗人となったタジムは、自分の運命を恨み、 歯噛みをし、泣き叫んだ。 しかし、彼の隣には、同じように杭に繋がれ、死を宣告されながらも、 穏やかな笑みを浮かべて最期の時を待つ男が立っていた。 盗人と英雄、二つの命が刑場で交わした約束、それは数奇な物語の始まりだった。